子イヌを育ててトレーニングする代わりに成犬の里親になることも、とてもすばらしい選択です。
成犬の里親になる場合、中には純血種もいますが、ほとんどは世界にただ一頭の雑種です。シェルターのイヌの中には、とてもよくトレーニングされて、マナーもよく、友好的であり、あと必要なのは思いやりのある人間のコンパニオンだけ、といったイヌもいます。
あるいは、家を排泄物で汚す、噛む、吠える、興奮しやすいといった問題行動をいくつか抱えており、子イヌのときに教えるはずだったことを成犬になってからも教える必要があるイヌもいます。また、シャイで怖がりなイヌで、自信を取り戻すために飼い主が献身的に時間を費やさなければならない場合もあります。
子イヌを育ててトレーニングするには多くの時間と実践的な知識が必要です。子イヌの行動は社会化とトレーニングによって常に(良い方向または悪い方向に)変化しています。しかし、成犬の行動と気質は既に(良くも悪くも)できあがっています。習慣は時間とともに変化するかもしれませんが、幼い子イヌに比べると歳をとったイヌの行動の方が変わりにくいのは事実です。
成犬になると、気質問題の解決には時間がかかりますが、一旦身に付いたよい習慣は崩れにくいものです。よって、シェルターまたは救助犬の中から良いイヌを引き取るときのポイントは、ひとえに選びに選び抜くことなのです!候補となるイヌを十分な時間をかけて試運転してください。
皆さんにとっての完璧なイヌはどこかにいるはずです。ですから忍耐強く探し、現実的に考えて、感情だけでなく頭を使って選んでください。成犬を選ぶ際には、自分がそのイヌを好きか、そのイヌが自分(や他の人)を好きか、基本的なマナーと家庭のエチケットをわきまえているかを評価しなければなりません。
お互いに対する愛情イヌを選ぶ際には、家族全員が参加し、全員が 100%納得して最終決定をしなければなりません。家族全員がそのイヌを好きで、イヌも家族全員が好きであることを確認しなければなりません。
イヌが家族全員に自ら近づいていき、ハンドリングやなでられることを心から楽しんでいることを確認してくだい。また、イヌが家族以外の人も好きかどうか確認してください。
様々なタイプの人々-特に子ども、男性、見知らぬ人-とイヌがどのように接するかを観察してください。コンパニオンドッグとして一番大切な資質は、友好的で、人と一緒にいることや注目されることを喜ぶということです。
試運転
イヌを家につれて帰る前に、よく感触をつかんでおくことが大切です。
まず、イヌの通常の様子を確認してください。ケネルはきれいか、汚れているか。噛むオモチャで遊ぶか。落ち着いておとなしいか、興奮しやすく吠えているか。必ず家族全員が十分な時間をかけてイヌを「試運転」してください。
そしてイヌが誰にでも注意を向けることができるか、誰から呼ばれても来るか、全員がイヌにオスワリ、フセ、ロールオーバー(ゴロン)をさせられるかを確認してください。
外をぐるっと散歩し、リードをつけてどのように歩くかを判断してください。特にハンドリングしたり、体のあちこちを撫でたり(調べたり)、抱きしめたり拘束したり)する時間を十分にとりましょう。マズル、耳、首(と首輪)、足、お尻をハンドリングされるのを楽しんでいますか?
もし触られることに敏感な部分があれば、食べ物を使いながら徐々に慣らしていくトレーニング(系統的脱感作法)ができるかどうか確かめてみましょう。
イヌが家に来てから初めての 2 週間環境の変化はイヌが新しい家庭のルールを学ぶすばらしいチャンスです。第一印象は非常に重要であり、その印象は消すことができません。ですから排泄のしつけと噛むオモチャのトレーニングをすでに学習しているイヌでも、家に来てからの 2 週間ほどは、どこで排泄したらよいか、何を噛んだらよいか、また一ヶ所に落ち着いておとなしくすることを教えてください。
新しい家に来て多くの変化にさらされると、イヌは多少なりともストレスを感じ、エネルギーを爆発させ(興奮したり無駄吠えをする)、家で独りなると不安を感じる(吠える、噛む、排泄をする)傾向があります。
最初の 2 週間でイヌに悪い習慣を一切つけさせないようにすることが非常に大切です。
排泄のしつけと噛むオモチャのトレーニングでイヌに失敗させないためには、短時間・長時間の居場所の制限プログラム(『子イヌを飼ったあとに』第 3 章「ホームアローン(家でひとりぼっち)参照」を行ってください。
しばらくの間、イヌに食器からフードを自由に食べさせないでください。
その代わりに家族、友だち、または見知らぬ人の手でフードをルアーとして使ったり、ご褒美として与えて、排泄のしつけ、古典的条件付け、または基本的なマナーのしつけに利用しましょう。
残りのフードはコングに入れて、一ヶ所でおとなしく落ち着いていられるように教えましょう。新しい家で人間と一緒に暮らすことに適応できたら、そのイヌは残りの人生を謳歌できるでしょう。
怖がりなイヌ
多くのイヌは社会化不足で、シェルターでは怖がりになることもあります。
怖がりなイヌをシェルターのストレスから解放できれば、イヌにとっての救世主になりますが、ここで覚えていなければならないのは、怖がりなイヌに自信をつけさせる練習は、非常に時間がかかり、大変であるということです。
時間があり、方法を知っている人でなければできません。私が最近引き取った 2 頭は、男性と見知らぬ人に対して怖がりで、攻撃的でした。どちらもすばらしい成果が出ましたが、実際、時間と忍耐が必要でした。