吠える問題

吠えることは、尻尾をふる、穴を掘るなどと同様に、イヌにとって正常な行動です。したがって、「一切吠えるな!!」とイヌに要求しても無駄であり、非人道的です。しかしなるべく吠えないように環境を調節したり、合図によって吠えることと静かにすることを教えることで、「吠える」行動を生活の中でうまく調和させることはできます。


イヌが吠える原因は様々で、対応方法も異なります。

原 因1 なわばり性の警戒・威嚇吠え

テリトリーに知らない人や動物が近づいてくると、イヌはテリトリーを守るための警告や威嚇の意味で吠えます。

対応策

まずは、なるべく吠えないような環境作りが重要です。
カーテンを閉めて外を見えないようにする、人がいないときには庭に出さないようにするなど、吠える行動を誘発させてしまう刺激をできるだけ避けることのできる環境づくりを心がけましょう。

原因2 要求吠え(学習による吠え行動)

散歩に行きたいときに吠える、抱き上げてほしいときに吠えるなど、吠えることで何か要求が満たされると、イヌはそれを学習して吠えるようになります。

対応策

吠える原因がはっきりわかる場合は、要求に応えずに徹底して無視します。気まぐれに無視する、あるいは家族によって無視する人と要求に応える人がいるなど、対応がばらばらだとイヌは理解できません。

無視することで、吠える行動が一時的にひどくなる場合もありますが、根負けせずに無視し続けることで、イヌはいずれ吠えても仕方ないと理解するようになります。
また、食事や散歩の時間など、1日のスケジュールを固定してしまうと、食事前や散歩前に興奮して要求吠えしやすくなります。時間を固定し過ぎないことも重要です

原 因3 不安や恐怖による吠え行動

人やイヌ、又自転車や掃除機など、馴れない刺激が近づくと、不安や恐怖から吠えて刺激を追い払おうとするイヌがいます。このような場合に、無理矢理近づけて馴らせようとすると、恐怖のあまり攻撃的になり、人やイヌを咬んでしまう危険もありますので、慎重な対応が必要です。

対応策

徐々に苦手な刺激に馴らしていきましょう。例えば、男性が苦手なイヌであれば、まずは男性が遠くに見えるところで吠えなければフードをあたえる、次は少し近づいてフードをあたえる、そして男性からフードを投げてもらう、最終的に男性の手からフードをあたえるなど、段階的に馴れさせていきます。人以外の刺激の場合も同様に行います。ひどい場合は、すぐに専門家に相談しましょう。

原 因4 退屈しのぎ

多くの家庭犬は1日中家の中で落ちついて過ごすことを要求されます。
長時間の留守中などに、何もすることがないイヌが退屈しのぎで吠え始め、それが習慣化されてしまう場合があります。

対応策

ひとりでも楽しく過ごせるように、フードを詰めたオモチャで遊べるように教えましょう。詳しくは、「お留守番」のバイブルをご覧ください。

原 因5 欲求が満たされないことからくる吠え行動

リードが張っているときは興奮して吠えるのに、実際にイヌが近づいたり、ドッグランなどでリードを外してやると、静かに遊び始めるイヌなどは、何か障壁があり、欲求が満たされないことから吠えてしまうタイプです。

対応策

興奮しやすい環境であっても飼い主のコマンドに従うようにトレーニングします。まず、落ちついた環境でコマンドに従えるように練習しましょう。

合図で吠えることと静かにすることを教える

合図で吠えることと静かにすることを教えると、たとえ吠えても数回で止めさせることができます。方法は、まず落ちついているときに「ワンワン(又は、吠えろ)」と言って、その直後にイヌが必ず吠える刺激(たとえばドアベル)を鳴らすことで、わざと吠えさせるようにします。上手く吠えたら十分にほめましょう。

何度か繰り返して、イヌが合図で吠えるようになったら、吠えている途中に「シー」と言って、フードを鼻の前で振るなどしてイヌの興味をひきます。そうすると、イヌはフードの匂いを嗅ぎ始め、自然に吠えるのを止めます。止めたときにフードをあたえましょう。

これを繰り返すと、イヌは「ワン」という号令の後に必ずドアベルが鳴ることを学習し、そのうち号令を聞いただけで、ドアベルが鳴らないうちに吠え始めます。つまり、号令されたら吠えることをイヌが学んだことになります。

同様に、「シー」という号令を聞くとフードが出てきて、静かにすればフードがもらえるということを予測できるようになります。
この2つの練習を繰り返しながら、「シー」と言っておとなしくなった後、ごほうびをあげるまでの時間を徐々に延ばしていきます。「シー」という指示は必ずやさしい声で言い、イヌが静かにしている間もささやくようにほめます。小さな声で話しかける程イヌは集中して聞こうとするので、自然と吠えなくなります。