子イヌの咬みつき

子イヌが咬むのは当然で、必要なことです。成犬になったときに優しく咬むことができるようになるためには、子イヌのうちに遊びでケンカをしたり咬んだりすること、飼い主さんの適切なトレーニングが不可欠です。


子イヌにとって大切な咬みつき遊び

子イヌ同士が遊んでいるとき、咬んでも大きなケガになることはありませんが、それでもかなり痛いので、咬まれた方はキャン!と鳴いて遊ぶのをやめてしまいます。咬んだ方は、遊べなくなるのは嫌なので、徐々に咬む力を抑えるようになります。そして、歯とあごが発達し終わる6ヶ月齢位までに、自分の咬む力を把握し、加減して咬むことを覚えます。

このような咬みつき遊びを十分に経験した子イヌは、通常成犬になっても、強く咬みつくことはありません。逆に子イヌの頃に、めったに他のイヌと遊んだり暴れたりしない、また飼い主をほとんど咬んだことのないイヌは、一見安全なイヌのように見えますが、実は、“咬んだら相手は痛いのだ”ということを学ぶ機会に恵まれなかったため、将来突発的な事故が起きたときに大ケガを負わせる危険性があります。

これらの危険を予防するために、子イヌ同士を遊ばせる機会のある、しつけ教室などへ積極的に参加しましょう。

子イヌ同士の遊びの中で、咬む強さを覚えていきます。

人と共に暮らす上で最も重要なこと

イヌが人と共に幸せに暮らすために学ばなくてはならない最も重要なこと、“人を咬んではいけない”ということです。これは、イヌとの遊びの中で咬むチャンスを作ってやり、繰り返し練習しなければ身につけることができません。

人を咬んではいけないことを教えるために、初めから咬む行動を一切禁止してしまうと、一時的には安心できても、将来的には危険だと言えます。なぜなら、咬む行動全てを抑えられてしまうため、イヌはどれだけの強さで咬んだら人の肌が傷つくのかを学べないまま成長してしまうことになります。

すると、成犬になってから怖い目にあい、攻撃的になってしまったときなどに、力の抑制ができず、相手に深刻なケガを負わせることになりかねません。

咬みつきを抑制させるためには

1.まず、咬む力を加減することを教える
2 その次に、勝手に咬みつかないことを教える

咬む力を加減するそ の 1
痛いほど強く咬まない

強く咬まれると痛いということを教えるために、子イヌの口をつかんだり、叩いたりして叱る必要はありません。子イヌが強く咬んだら、「痛いっ!!」などと言って、びっくりさせます。その瞬間、子イヌが咬むのを止めたら、ほめてオスワリをさせ、できたらごほうびをあたえてまた遊び始めましょう。

もし、「痛いっ!!」と言っても咬むのを止めなかったら、イヌをひとりにさせて部屋を出ていってしまいます。これで子イヌは遊び相手を失ったことになります。30秒ほどしたら子イヌの元に戻って、オイデ・オスワリ・フセなどのコマンド練習をして落ちつかせ、また遊びを再開します。子イヌにリードをつけて柱などに固定して、咬まれたらイヌから離れるようにしてもよいでしょう。

咬む力を加減するそ の 2
全く力を入れない

子イヌが「痛いっ!!」という言葉の意味を理解するようになってきたら、今度は子イヌが咬んだときに痛くなくても痛いふりをします。ちょっとでも力を入れたら、オーバーに声をあげます。そうすると、イヌはすぐに「人間ってめちゃくちゃ敏感なんだ、もっとやさしく咬まなきゃ」と考えます。そして、咬む力は徐々に弱くなります。

同様に、イヌに衣服やスリッパなどもくわえさせてはいけません。
手を咬まれたときと同様に、それらを噛んだら「痛いっ!!」と言って、かまうのをやめるようにしましょう。放っておくと衣服などを噛む行動がエスカレートし、いずれ肌すれすれのところまで歯を当てるようになります。

「オフ」または「ヤメテ」

子イヌが人の肌に歯をあてるとき完全に力を抑制することができるようになったら、次は好き勝手に咬まないことを教えます。フードを持っている手をイヌに差し出し、匂いを嗅がせます。

そして、「オフ(ヤメテ)」と言って、イヌが手から顔をそむけた瞬間に「そう!いい子だね」とほめてごほうびをあたえます。繰り返しこの練習をして、「オフ(ヤメテ)」と言われたら、手から顔を離すとごほうびがもらえることをイヌに学習させます。

イヌが「オフ(ヤメテ)」をできるようになったら、ひっぱりっこなどの遊びを取り入れ、咬みつきをコントロールするための練習を十分に行いましょう。